個人事業主が交通事故を起こした場合、損害賠償金や罰金の支払いが事業に大きな影響を及ぼすことがあります。また、税務上の取扱いが通常の経費と異なるため、個人事業主の確定申告において正しい知識が必要です。本記事では、交通事故後の損害賠償金や罰金の扱いについて詳しく解説します。

個人事業主が事故を起こした場合の損害賠償金の取り扱いについて

所得税法上は,損害賠償金(これに類するものを含む。)の「必要経費」と「家事関連費」との区分の限界を、納税者の「故意又は重過失」の有無に求めています。損害賠償金のうち必要経費と認められないものとして、次の内容が規定されています。

所得税法施行令98条第2項

「法第45条第1項第8号(必要経費とされない損害賠償金)に規定する政令で定める損害賠償金(これに類するものを含む。)は,同項第1号(編注:家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの)に掲げる経費に該当する損害賠償金(これに類するものを含む。以下この条において同じ。)のほか、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に関連して、故意又は重大な過失によって他人の権利を侵害したことにより支払う損害賠償金とする。」

損害賠償金の内容について

所得税基本通達45-7

法第45条第1項第8号かっこ内に規定する「これに類するもの」には、慰謝料、示談金、見舞金等の名目のいかんを問わず、他人に与えた損害を補填するために支出する一切の費用が含まれます。

重大な過失があったかどうかの判定

所得税基本通達45-8

上記に掲げた令第98条第2項(必要経費に算入されない貨物割に係る延滞税等の範囲)に規定する重大な過失があったかどうかは,その者の職業、地位、加害当時の周囲の状況、侵害した権利の内容及び取締法規の有無等の具体的な事情を考慮して、その者が払うべきであった注意義務の程度を判定し、不注意の程度が著しいかどうかにより判定するものとされており、次に掲げるような場合には、特別な事情がない限り、それぞれの行為者に重大な過失があったものとされます。

  1. 自動車等の運転者が無免許運転、高速度運転、酔っぱらい運転、信号無視その他道路交通法第4章第1節(運転者の義務)に定める義務に著しく違反すること又は雇用者が超過積載の指示、整備不良車両の運転の指示その他同章第3節(使用者の義務)に定める義務に著しく違反することにより他人の権利を侵害した場合
  2. 劇薬又は爆発物等を他の薬品又は物品と誤認して販売したことにより他人の権利を侵害した場合

道路交通法上の罰金

所得税法第45条により、罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又は外国の地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料については、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できない。

結論

個人事業主が営業中に事業用車両で事故を起こした場合には、故意又は重大な過失によらない事故により支払った損害賠償金は、必要経費に算入できます。

交通事故による罰金は、必要経費に算入できません。