「上場株式等の繰越控除」という制度をご存じでしょうか?上場株式等の譲渡を行う際、利益が出ることもあれば損失が出ることもあります。上場株式等の繰越控除は、投資家が損失を上手に処理し、翌年以降の利益と相殺することで、税負担を軽減できる仕組みです。とくに、株式投資が盛んな昨今、損失の繰越控除を理解することは資産運用の成功に欠かせません。本記事では、上場株式等の繰越控除の基本的な仕組みや申告方法、適用条件を分かりやすく解説しながら、税制面でのメリットを最大限に活用する方法をご紹介します。初心者の方から経験豊富な投資家まで、ぜひ一度確認してみてください。損を最小限に抑え、未来の利益を最大化するためのヒントがきっと見つかるはずです!
上場株式等の繰越控除とは?
上場株式等の譲渡により発生した損失は,確定申告書の提出を条件として,3年にわたり繰越控除できることとなっています。なお,この繰越控除ができる株式の譲渡損は,上場株式等に係るものに限られます。
対象となる上場株式等の譲渡
この特例の対象となる「上場株式等の譲渡」とは,次に掲げるものとされています。
- 金融商品取引業者又は登録金融機関への売委託により行う上場株式等の譲渡
- 金融商品取引業者に対する上場株式等の譲渡
- 登録金融機関又は投資信託及び投資信託委託会社に対する上場株式等の譲渡で政令で定めるもの
- 措置法第37条の10第4項又は第37条の11第4項に規定する事由による上場株式等の譲渡
- 上場株式等を発行した法人の行う株式交換又は株式移転による株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人に対する当該上場株式等の譲渡
- 上場株式等を発行した法人に対して会社法第192条第1項の規定に基づいて行う単元未満株式の譲渡
- 上場株式等を発行した法人に対して旧商法第220条ノ6第1項の規定に基づいて行う端株の譲渡
- 上場株式等を発行した法人が行う会社法第234条第1項又は第235条第1項の規定等による一株又は一口に満たない端数に係る上場株式等の競売による上場株式等の譲渡
- 信託会社(信託業務を営む金融機関を含む。)の営業所に信託されている上場株式等の譲渡で,当該営業所を通じて外国証券業者への売委託による譲渡
- 信託会社(信託業務を営む金融機関を含む。)の営業所に信託されている上場株式等の譲渡で,当該営業所を通じて外国証券業者に対して行う譲渡
- 所得税法第60条の2第1項の規定により国外転出をする居住者が,国外転出時に有価証券等に対し有価証券の譲渡があったとみなされた譲渡
- 所得税法第60条の3第1項の規定により居住者の有する有価証券等が,贈与,相続又は遺贈により非居住者に移転した場合に有価証券等の譲渡があったとみなされた譲渡
上場株式等の譲渡損失の損益通算
上場株式等に係る譲渡損失が生じた場合は,他の上場株式等の譲渡所得との損益通算だけではなく,上場株式等に係る配当所得との損益通算も可能です。また,控除できない譲渡損失があれば,3年にわたり繰越控除により上場株式等に係る配当所得(申告分離課税を選択したものに限る。)とも控除ができます。なお、上場株式等以外の株式より生じた譲渡損益は,上場株式等との通算はできず,上場株式等以外の株式の譲渡との間での損益通算が可能となり,また繰越控除はできません。
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除と期限後申告
期限後申告であっても,上場株式等に係る譲渡損失の計算に関する明細書などの添付がある昨年分の確定申告書を提出し,繰越控除を受ける金額の計算の明細書などを添付した本年分の確定申告書を提出すれば,上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用があります。
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けるための条件
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けるためには,次1から3の各年分において,以下の書類の添付や提出がある場合に限られます。
- 上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分
次の書類を確定申告書に添付していること。
「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」
「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」 - その後の年分
連続して確定申告書を提出していること。
「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」の添付が必要です。
※株式の譲渡がなかった年も,譲渡損を翌年に繰り越すための申告が必要です。 - 繰越控除を受ける年分
次の書類を確定申告書に添付していること。
所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除と更正の請求
株式譲渡等に係る譲渡損失が、特定口座のうち源泉徴収選択口座で生じている場合において、譲渡損失の繰越控除の手続きを行わずに確定申告書を提出したときは、申告不要(源泉分離課税)を選択したこととなるため、更正の請求をすることはできません。
なお、「一般口座」や「特定口座のうち簡易申告口座」で生じた譲渡損失であれば,更正の請求が可能です。