インボイス制度導入に伴い、振込手数料の取り扱いが多くの企業にとって重要な課題となります。この制度下では、正しい適格請求書の保存は、仕入税額控除を受ける上で不可欠です。本記事では、インボイス制度における振込手数料の扱い方と、企業が直面する問題に対する実用的な対応策を、具体的な事例を交えて解説します。
振込手数料の取り扱いの対象となる事業者
簡易課税制度、2割特例の適用を受けない事業者
インボイスの保存なしで仕入税額控除可能な取引
- 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
- 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
- 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
- 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストにより差し出されたものに限ります。)
銀行の振込手数料を買い手が負担する場合:インボイス制度での原則的取り扱いについて
窓口で支払った場合
銀行窓口を介して振込手数料を支払う場合、振込手数料に関するインボイスが窓口で交付されます。無くさないように保存しておきましょう。
ATMで支払った場合
ATMにて振込手数料を支払う場合、自販機特例の適用によりインボイスの保存は不要です。ただし、帳簿に「●●銀行●●支店 ATM」など、課税仕入の相手方の住所又は所在地等の記載が必要となります。
インターネットバンキングで支払った場合
インターネットバンキングでの支払いの場合も、窓口での支払いと同様にインボイスの保存が求められます。
交付の方法については、各銀行のホームページなどを確認する必要があります。
銀行の振込手数料を売り手が負担する場合:インボイス制度での原則的取り扱いについて
売上値引きとして処理する場合
振込手数料負担が1万円未満の場合には、インボイスの保存は不要です。会計ソフトに入力する際には消費税のコードを「売上に係る対価の返還等」にする必要があります。
支払手数料として処理する場合
原則的には、インボイスの保存が必要となります。
ただし、次の少額特例により一定の事業者については、一定期間において、インボイスの保存が不要となりました。
振込手数料のインボイス制度での取り扱いのまとめ
- 簡易課税制度、2割特例の適用を受けない事業者は、ATMで振込した場合以外の銀行への振込手数料の支払いについてはインボイスの保存が必要です。
- 振込手数料の負担をお願いされた場合には、負担額が1万円未満の場合にはインボイスの保存は不要です。
インボイス制度導入により、振込手数料の取り扱いは多くの企業にとって重要な課題となります。本記事では、簡易課税制度や2割特例を受けない事業者向けに、振込手数料の適切な管理方法を解説しました。銀行窓口、ATM、インターネットバンキングを通じた支払いにおけるインボイスの保存要件や、少額特例の適用による帳簿保存のみでの仕入税額控除が可能なケースを具体的に説明。特に中小企業者は、一定の条件下で税込価額1万円未満の課税仕入れについて、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの経過措置として、インボイスの保存なしに仕入税額控除を受けられる点を強調しました。このガイドラインは、企業がインボイス制度下での振込手数料を適切に管理し、税務上の不利益を避けるための実用的な対応策を提供します。